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漢方シンフォニー

小柴胡湯(ショウサイコトウ)



元来、急性伝染病に対する抗炎症薬としてはじまった方剤「小柴胡湯」


 漢方の「傷寒論・金匱要略」という古典書に載っている処方。
現在でも頻用される漢方薬処方で、7種類の生薬「ニンジン、タイソウ、ハンゲ、ショウキョウ、オウゴン、カンゾウ、サイコ」から構成されており、処方の名前は原料主生薬のサイコに由来している。

効能・効果


「吐き気、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感及びかぜの後期の症状 」
本処方は寒さなどの病因が体表面から一段深く内部に入り込み出現する病証に適応。
 病因が体表でなく体の内部に入り込み、胸脇などの体の側面や中部で正気と邪気が格闘し、発熱と悪感が相乱れる病証が出現します。また、胸脇部に膨満感があり苦しい・胸苦しい・嘔吐すると楽になる・食欲低下等の病証や、気分が晴れない・口が苦い・咽が乾燥する・めまい・げっぷがでる等の病証も出現。
本方剤はこれらの諸病証に適応し、主に柴胡を生薬の中心とします。
体内部に入り込んだ熱を解消し、オウゴンはその作用を補強。ハンゲ・ショウキョウ・ニンジンは消化器機能を高め、体を守る力の補強に働きます。

原典【傷寒論・金匱要略】


傷寒五六日、中風、往来寒熱、胸脇苦満、黙黙不欲飲食、心煩喜嘔、・・・小柴胡湯主之

ニンジン「Ginseng radix 」(うこぎ科)
【分布】朝鮮半島、中国、ウスリー、日本では長野、福島、島根で栽培される多年草。
【形態】草丈は60cm前後。根は直下し、根茎は通常短い。花期は夏。茎の先端に淡緑色の小さな花を多数つける。
【薬用部位】根。苗床に播種後5~6年目の8~9月、地上が枯れる頃根を掘り上げ、水洗いしながら表皮を除き日干しにする(←白参)か、水洗後、約3時間蒸し、乾燥室に入れ火力乾燥する(←紅参)。
【成分】サポニンとしてジンセノイドRo、Ra~Rh、他にパナキシノール、β-エレメンなど。
【薬効薬理】ジンセノサイドにたんぱく質、DNA合成促進作用、サポニン分画に抗疲労、血糖降下作用などの有する。漢方では、強壮、強心、健胃補精、鎮静薬として、食用不振、消化不良、下痢、嘔吐、衰弱などに用いられる。


タイソウ「Zizyphus jujuba Mill. var. inermis (Bge.) Rehd.(くろうめもどき科)
~ ナツメ ~
【分布】ヨーロッパ南部、アジア西南部原産で、日本には中国から渡来し、日本各地で広く植栽される落葉小高木。
【形態】樹高10m。しばしば枝節にとげをつける。葉は羽状複葉状に互生し、卵形から卵状皮針形で長さ2~6cm、鈍頭か、ときに凹頭できょ歯縁。花期4~5月。核果は楕円形で長さ2~3m。
【薬用部位】果実。果実が成熟しきらないときに採集して、蒸してから日干しにする。
【成分】糖、有機酸類、トリテルペノイドのオレアノール酸、オレアノン酸、マスリニン酸、ベツリン酸、サポニンのチチフスサポニンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、サイクリックAMPなどを含有。
【薬効薬理】アデニルサイクラーゼ活性、フォスフォジエステラーゼ活性が認められているほか、鎮静、強壮、緩和、利尿薬としてヒステリー症、神経衰弱などに応用される。


ハンゲPinelliae tuber 」(さといも科)
~ カラスビシャク ~
【分布】北海道から九州および朝鮮半島、中国に分布し、畑地の雑草として普通に生える多年草。
【形態】地下に径1cm内外の球茎があって、1~2枚の葉を出す。葉柄は長く中央部にしばしば玉かご(珠芽)を生じる。葉は3出複葉、花期は5~7月。花茎の先に肉穂花序ができ草丈40~60cm。
【薬用部位】球茎(半夏<ハンゲ>)。夏、花のある時期と10月の作物の堀りあげ時期に球茎を採集する。細長い根を除いて、水と砂を入れた容器に入れてかきまぜながら外皮をとり除き、これを水洗いして日干しにする。
【成分】球茎にホモゲンチジン酸、3,4-ジハイドロキシベンズアルデヒドおよびその配糖体、アミノ酸等。
【薬効薬理】漢方では健胃消化・嘔吐・鎮咳・去痰等を目的として各種処方に配合される。


ショウキョウ
Zingiber officinale (L.) Rose.」(しょうが科)
【分布】熱帯アジアの原産で、日本には2600年以上前に渡来し、食用、薬用、調味料の原料用に各地で栽培される多年草。
【形態】草の丈は30~50cm。根茎は多肉質で節から偽茎を直立する。日本では花をつけないが、暖地ではまれに開花する。
【薬用部位】根茎(生姜、乾生姜、乾姜)。根茎を堀上げ、水洗い後そのまま使用(生姜)か皮を除いて石灰粉をまぶし、日干しにする(乾生姜、生姜)。また蒸して乾燥する(乾姜)。
【成分】根茎に辛味成分のジンゲロン、ショウガオール、ジンゲロール、精油のジンギベロール、ジンギベレン、α-、β-、γ-ビサボレン、α-、β-クルクメンなどを含む。
【薬効薬理】「生姜には唾液中のジアスターゼの作用を促進し、また強い殺菌作用を示し、特にジンゲロン、ショウガオールに強い作用がみられる。乾姜にも辛味性健胃作用がある。生姜は芳香性健胃、矯味、矯臭、食欲増進薬として腹痛、腰痛などにも用いられる。


オウゴンScutellariae radix 」(しそ科) 
~ スクテラリア・アモエナ ~
【分布】中国の四川、貴州、雲南などに分布し、山間の林縁に生える多年草。
【形態】草丈は10~30cm。茎は直立し、稜にそって白い呂の柔毛がある。葉は長楕円形ないしは広皮針形。長さ2~3.5cm、幅7~14mm、全縁もしくはやや粗いきょ歯があり、無柄、両面に細かい柔毛がある。総状花序は頂生。花冠は長さ2.4~3cm、紫ないし青紫色。小堅果は楕円形、褐色で柔毛におおわれる。
【薬用部位】根(黄芩<オウゴン>)。春~初夏および秋に根を掘り取り、日干しにして半乾燥したのち、コルク皮を除き、再び日干しにする。
【成分】フラボノイドのバイカリン、バイカレイン、オウゴニン等。
【薬効薬理】バイカリン・バイカレインには、抗炎症・抗アレルギー・降圧・利尿等の作用がある。
漢方では、解熱・消炎・鎮痛・止血等の効果があるとされ、健胃・下痢・鼻出血等に応用される。


サイコ「Bupleuri radix 」(せり科)
【分布】中国の東北、華北、西北、華中、華東の各省区に分布し山野の向陽地に生える多年草。
【形態】草丈40~70cm。根は肥厚し、黄褐色。茎は不毛で直立し、上部で分枝する。花期は8~10月。黄色の小さな花を5~10個つける。
【薬用部位】根。10~11月に根を掘り上げ、水洗いして日干しにする。
【成分】サポニン配糖体のサイコサポニンa~f及びそのゲニンであるサイコゲニンE~G、ステロールのα-スピナステロール、脂肪油のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パル道ン酸などを含む。
【薬効薬理】煎液には体温降下作用があり、サポニン分画には中枢抑制、鎮痛、解熱、ストレス潰瘍の予防、胃酸分泌抑制、抗炎症、抗アレルギー作用などが認められている。漢方としては、解熱、鎮痛、解毒、鎮静薬として胸脇苦満、寒熱往来、黄疸、胃炎、頭痛などに用いられる。


カンゾウ「Glycyrrhiza 」(まめ科)
【分布】ソビエト連邦のウラル地方、モンゴルおよび中国北部に分布し、日本でもまれに栽培されることがある耐寒性の多年草。
【形態】草の丈は30~80cm。ときに1mに達する。根茎は円柱形で横走し、主根は長く粗大。
【薬用部位】根およびストロン。根を掘り上げ、水洗いの後日干しにする。
【成分】根にトリテルペノイド系サポニンで甘味を有するグリチルリチンのほか、アスパラギン、ブドウ糖、ショ糖、マンニット、苦味質、リンゴ酸、フラボノイドのリクイリチン、リクイリチゲニン、ネオリクイリチンなどを含む。
【薬効薬理】グリチルリチンの分解産物のグルクロン酸は生体の肝臓で有害物質と結合してグルクロナイドになり解毒作用を示す。グリチルリチンは抗アレルギー作用があり、皮膚科領域で応用されている。また近年甘草エキス、グリチルリチン、グリチルリチン酸に抗炎症、副腎皮質ホルモン様作用のほか、グリチルリチンの誘導体のビオガストロンに抗潰瘍作用が認められた。また甘草エキスには鎮咳作用、免疫抑制効果も報告されている。緩和、矯味、鎮痙、去痰薬として用いられ、多くの漢方処方に配剤され、天然の甘味料としても用途が多い。