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漢方シンフォニー

葛根湯(カッコントウ)


「漢方薬」と聞いて誰もがわかるほど有名になった「葛根湯」


 漢時代の「傷寒論」という古典書に載っている処方で、現在でも使用される代表的な漢方薬のひとつ。この処方は7種類の生薬「カッコン、マオウ、タイソウ、ケイヒ、シャクヤク、カンゾウ、ショウキョウ」から構成されており主に感冒に用いられます。「かぜに葛根湯」というキャッチフレーズで有名になりましたが、正確にはこの処方は汗を出す発汗剤、水分代謝を良くすることによる肩こり、筋肉痛の改善がこの薬の処方目的となります。

効能・効果


「感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み」
 本処方は感冒に用いられ、汗が出ずに寒気を伴う発熱等が特徴の、風寒型と呼ばれる感冒病証に用います。

 体内の血液や水分などの流れに頭からうなじ、背中を走る経路があります。この道筋に病因が侵入することで悪寒や発熱を発現します。そしてその結果体の水分の流れを悪化させ、汗が止まり筋肉がこわばり、頭や項背部が痛むといった病状が出てきます。
この処方はその道筋に侵入した病因を発汗により排除し良好な水分代謝を確保することで、筋肉のこわばりを緩め痛みを緩和します。処方内の「マオウ・ケイヒ・ショウキョウ」は発汗作用による悪寒の除去。「カッコン」は「ケイヒ」との相乗効果により体の下部に滞った体液を上昇させ、水分代謝、止痛に働きます。「シャクヤク」は水分の消耗を抑え、筋肉のこわばりを緩和し、止痛に働きます。

原文【傷寒論】


 太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之。

ケイヒ
Cinnamomum cassia Blume」(くすのき科)
【分布】中国福建、広東、広西、雲南各省、ベトナム北部、インドネシアに分布し、山地の斜面や砂地などに生える常緑高木。
【形態】樹高10~15m。樹皮は灰褐色で芳香あり。花期は5~7月。
【薬用部位】樹皮(→ケイヒ)、果実(→ニクケイシ)。樹皮を採集して水洗い後、日干し。
【成分】樹皮にケイアルデヒド、ケイヒ酸、オイゲノール、果実にケイアルデヒド、クマリン、ケイヒ酸、プロトカテコール酸などを含む。
【薬効薬理】ケイヒの精油は腸のぜん動運動を亢進し、一部殺菌作用確認されている。ケイヒ、ニクケイシは健胃、駆風矯味、解熱、鎮痛薬として頭痛、発熱、感冒、身体疼痛などに用いられるほか香料などにも使用されている。


マオウ「Ephedra sinica Stapf 」(まおう科)
【分布】中国東北部、モンゴルに分布し、原野、砂地などの乾燥地に生育し、日本でもときに栽培される草質状の常緑小低木。
【形態】樹高30~70cm。根茎は木質で厚く屈曲する。茎は細長く分枝してやや扁平で節が多い。
【薬用部位】地上茎。地上茎を採集し日干しにする。
【成分】地上茎にアルカロイドのl-エフェドリン、d-プソイドエフェドリン、l-メチルエフェドリン、l-ノルエフェドリンのほか、エフェドラキサン、オキサゾリジン誘導体を含む。根にはエフェドリン型アルカロイドは存在せず、ベタイン、アフェランドリン、チロシンなどが単離されている。
【薬効薬理】エフェドリンはアドレナリンに似た交感神経興奮作用があり、エピレナミンより作用が弱いが毒性も弱い。眼交感神経末梢刺激による散瞳効果があり、比較的短時間で消失する。また痙れん毒の有無にかかわらず気管支筋弛緩させ、その作用は緩和で持続性あり。また、発汗、血圧上昇作用が認められ、発汗、鎮咳、去痰薬としてぜんそく、肺炎、皮膚の排せつ機能障害による呼吸困難などに用いられる。


ショウキョウ「Zingiber officinale (L.) Rose.」(しょうが科)
【分布】熱帯アジアの原産で、日本には2600年以上前に渡来し、食用、薬用、調味料の原料用に各地で栽培される多年草。
【形態】草の丈は30~50cm。根茎は多肉質で節から偽茎を直立する。日本では花をつけないが、暖地ではまれに開花する。
【薬用部位】根茎(生姜、乾生姜、乾姜)。根茎を堀上げ、水洗い後そのまま使用(生姜)か皮を除いて石灰粉をまぶし、日干しにする(乾生姜、生姜)。また蒸して乾燥する(乾姜)。
【成分】根茎に辛味成分のジンゲロン、ショウガオール、ジンゲロール、精油のジンギベロール、ジンギベレン、α-、β-、γ-ビサボレン、α-、β-クルクメンなどを含む。
【薬効薬理】「生姜には唾液中のジアスターゼの作用を促進し、また強い殺菌作用を示し、特にジンゲロン、ショウガオールに強い作用がみられる。乾姜にも辛味性健胃作用がある。生姜は芳香性健胃、矯味、矯臭、食欲増進薬として腹痛、腰痛などにも用いられる。


タイソウ「Zizyphus jujuba Mill. var. inermis (Bge.) Rehd.(くろうめもどき科)
【分布】ヨーロッパ南部、アジア西南部原産で、日本には中国から渡来し、日本各地で広く植栽される落葉小高木。
【形態】樹高10m。しばしば枝節にとげをつける。葉は羽状複葉状に互生し、卵形から卵状皮針形で長さ2~6cm、鈍頭か、ときに凹頭できょ歯縁。花期4~5月。核果は楕円形で長さ2~3m。
【薬用部位】果実。果実が成熟しきらないときに採集して、蒸してから日干しにする。
【成分】糖、有機酸類、トリテルペノイドのオレアノール酸、オレアノン酸、マスリニン酸、ベツリン酸、サポニンのチチフスサポニンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、サイクリックAMPなどを含有。
【薬効薬理】アデニルサイクラーゼ活性、フォスフォジエステラーゼ活性が認められているほか、鎮静、強壮、緩和、利尿薬としてヒステリー症、神経衰弱などに応用される。


クズ(葛)「Pueraria lobata (Willd.) Ohwi 」(まめ科)
【分布】北海道から九州、中国、東アジア温帯地方に分布し、山野、向陽の土手などに生えるつる性木本。
【形態】茎は基部が木質で著しく伸長し、長さ10mに達する。花期は7~9月。
【薬用部位】根(葛根)。貯蔵根を掘り上げコルク皮を除いて縦割りにするか、5mmほどののさいの目に切って日干しにする。
【成分】根にでん粉、ダイジン、ダイゼイン、プエラリン、プエラリン-7-キシロサイドなどのイソフラボン誘導体などを含む。
【薬効薬理】発汗、解熱、鎮痙薬として熱性病、感冒、首、背、肩のこりなどに用いられる。


シャクヤク「Paeonia lactiflora 」(ぼたん科)
【分布】中国東北部、東シベリア、朝鮮半島原産で中国、日本各地で薬用、観賞用に古くから栽培され得る多年草。
【形態】草の丈は50~80cm。根は狭紡錘形か円錐状に肥厚する。茎は数本が直立して無毛。
【薬用部位】根。根を掘り上げ水洗いご日干しにする(赤芍)か、コルク層を除いて蒸し、陰干しにする(白芍)。
【成分】根にモノテンぺル配糖体のペオニフロリン、アルビフロリン、オキシペオニフロリン、ベンゾイルペオニフロリンのほか、安息香酸、ガロタンニンなどを含む。
【薬効薬理】「ペオニフロリン」には鎮痛、鎮静、抗炎症、血圧降下、血管拡張、平滑筋弛緩などの作用。「安息香酸」には局所刺激、防腐、弱い呼吸中枢麻痺、去痰作用など。収れん、緩和、鎮痙、鎮痛薬として、筋肉痙れん、腹痛、胃痙れん、頭痛、婦人病などに応用される。


カンゾウ「Glycyrrhiza 」(まめ科)
【分布】ソビエト連邦のウラル地方、モンゴルおよび中国北部に分布し、日本でもまれに栽培されることがある耐寒性の多年草。
【形態】草の丈は30~80cm。ときに1mに達する。根茎は円柱形で横走し、主根は長く粗大。
【薬用部位】根およびストロン。根を掘り上げ、水洗いの後日干しにする。
【成分】根にトリテルペノイド系サポニンで甘味を有するグリチルリチンのほか、アスパラギン、ブドウ糖、ショ糖、マンニット、苦味質、リンゴ酸、フラボノイドのリクイリチン、リクイリチゲニン、ネオリクイリチンなどを含む。
【薬効薬理】グリチルリチンの分解産物のグルクロン酸は生体の肝臓で有害物質と結合してグルクロナイドになり解毒作用を示す。グリチルリチンは抗アレルギー作用があり、皮膚科領域で応用されている。また近年甘草エキス、グリチルリチン、グリチルリチン酸に抗炎症、副腎皮質ホルモン様作用のほか、グリチルリチンの誘導体のビオガストロンに抗潰瘍作用が認められた。また甘草エキスには鎮咳作用、免疫抑制効果も報告されている。緩和、矯味、鎮痙、去痰薬として用いられ、多くの漢方処方に配剤され、天然の甘味料としても用途が多い。