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漢方シンフォニー

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)



「芍薬」と「甘草」というたった2種類の生薬から構成される妙薬


漢時代の「傷寒論」という古典書に載っている処方で、現在でもよく使用される代表的な漢方薬のひとつ。
この処方は2種類の生薬から構成されており、どちらの生薬も痛みを緩和する作用があり、けいれん性の痛みの緩和薬など、各種の痛みに広く用いられています。

効能・効果


 本処方は、筋肉の異常な痙れんやこむらがえり、腰痛・神経痛、生理痛、胃痛などさまざまな痛みの緩和に用いられます。その作用は筋肉緊張の弛緩で、横紋筋、平滑筋のどちらに対しても作用するとされます。芍薬は、筋肉や腱の異常緊張を緩和させ、また甘草は急迫症状を緩和して芍薬の作用を増強します。
「下肢の痙れん性疼痛(こむらがえり)や胃腸の激しい痛みなどの、急激におこる筋肉の痙れんを伴う疼痛などに用いる」

原文【傷寒論】


 傷寒、脈浮、自汗出、小便数、心煩、微悪寒、脚攣急、反与桂枝欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾姜湯与之(中略)若厥愈足温者、更作芍薬甘草湯与之、其脚即伸。

シャクヤク「Paeonia lactiflora 」(ぼたん科)
【分布】中国東北部、東シベリア、朝鮮半島原産で中国、日本各地で薬用、観賞用に古くから栽培され得る多年草。
【形態】草の丈は50~80cm。根は狭紡錘形か円錐状に肥厚する。茎は数本が直立して無毛。
【薬用部位】根。根を掘り上げ水洗いご日干しにする(赤芍)か、コルク層を除いて蒸し、陰干しにする(白芍)。
【成分】根にモノテンぺル配糖体のペオニフロリン、アルビフロリン、オキシペオニフロリン、ベンゾイルペオニフロリンのほか、安息香酸、ガロタンニンなどを含む。
【薬効薬理】「ペオニフロリン」には鎮痛、鎮静、抗炎症、血圧降下、血管拡張、平滑筋弛緩などの作用。「安息香酸」には局所刺激、防腐、弱い呼吸中枢麻痺、去痰作用など。収れん、緩和、鎮痙、鎮痛薬として、筋肉痙れん、腹痛、胃痙れん、頭痛、婦人病などに応用される。


カンゾウ「Glycyrrhiza 」(まめ科)
【分布】ソビエト連邦のウラル地方、モンゴルおよび中国北部に分布し、日本でもまれに栽培されることがある耐寒性の多年草。
【形態】草の丈は30~80cm。ときに1mに達する。根茎は円柱形で横走し、主根は長く粗大。
【薬用部位】根およびストロン。根を掘り上げ、水洗いの後日干しにする。
【成分】根にトリテルペノイド系サポニンで甘味を有するグリチルリチンのほか、アスパラギン、ブドウ糖、ショ糖、マンニット、苦味質、リンゴ酸、フラボノイドのリクイリチン、リクイリチゲニン、ネオリクイリチンなどを含む。
【薬効薬理】グリチルリチンの分解産物のグルクロン酸は生体の肝臓で有害物質と結合してグルクロナイドになり解毒作用を示す。グリチルリチンは抗アレルギー作用があり、皮膚科領域で応用されている。また近年甘草エキス、グリチルリチン、グリチルリチン酸に抗炎症、副腎皮質ホルモン様作用のほか、グリチルリチンの誘導体のビオガストロンに抗潰瘍作用が認められた。また甘草エキスには鎮咳作用、免疫抑制効果も報告されている。緩和、矯味、鎮痙、去痰薬として用いられ、多くの漢方処方に配剤され、天然の甘味料としても用途が多い。