春日野薬局グループは地域の皆様の健康で豊かな暮らしに貢献してまいります

春日野だより

健康と温泉


日本古来から続く温泉とのつきあい



 秋も深まり、紅葉を楽しめる紅葉シーズンになりました。
真っ赤に色づいたもみじを眺めながらゆっくりと温泉を楽しむことで得られる、日々の疲れからの解放と温泉によるリラックス効果は絶妙。

温泉は、わが国では古来より多くの人々に愛されてきました。道後温泉(愛媛県)、有馬温泉(兵庫県)、白浜温泉(和歌山県)を合わせて「日本三古湯」と呼び、日本最古の歴史書とされる「古事記」「日本書紀」にも温泉に関する記述がみられます。また多くの歴史書の中でも病や怪我に対する治療として利用されてきたケースが報告されており、湯治療法として利用されている温泉地も日本各地に点在しています。
予防医学からの観点でも古来から「湯治」「温泉療養」と、温泉による健康増進に温泉を用いるなど、われわれの生活に温泉は密接にかかわってきたのです。

では温泉の健康に対する効果はどのようなものがあるのでしょうか?
大きく分けると温泉の湯による「直接的な効果」と、温泉に入ることに付随する「間接的な効果」に分けられます。温泉地に赴き、ゆっくりとした時間を過ごすことで得られる休養効果、地形・気候の変化による転地効果、温泉地で良質な食事をすることで得られる食事効果などは後者の「間接的効果」に分類されます。
それに対して、前者の直接的な効果には温熱や水圧、浮力による「物理的効果」、その温泉に含まれる成分(泉質)に大きく左右される「化学的効果」、また物理効果や化学的効果を総合して得られる「変調効果」が前者の「直接的効果」に分類され、今回はこの前者の「直接的効果」に的を絞ってみたいと思います。

温泉の直接的効果

①物理的効果

  • 温熱作用:身体を温め、血流促進・新陳代謝促進作用
  • 水圧効果:浴槽に入ることで体に水圧がかかり、内臓への刺激の増大による内臓運動の活発化。いわゆる天然のマッサージ。
  • 浮力効果:浴槽につかることで重力から解放され、筋肉の弛緩など心身のリラックス効果が期待できます。

②化学的効果

  • 泉質によって、肌へのスキンケア効果、清浄効果、殺菌効果、収斂効果などがあり、また泉飲することで内臓機能の回復、血流促進、新陳代謝促進、貧血の改善などの効果がある。

③変調効果

  • 効果の総合作用として、身体の自然治癒力の亢進作用、免疫・内分泌系、自律神経バランスの正常化などの効果。



温泉が普通の銭湯や風呂と決定的に異なることが、各成分がイオン化しているということです。このイオン化した温泉特有の成分は地球の巨大な内圧によって生み出された自然独自のもので、人工的には真似をすることは難しいです。また温泉に含まれている化学成分は温泉独特なもので、イオン化された成分が皮膚を通して直接体内に吸収されさまざまな効果が期待できる理由となっています。
(※入浴・泉飲には、病状、泉質に合わせた最適な方法を行わなければかえって逆効果になることがあるだけでなく、温泉には禁忌症(入ってはいけないとされる症状)もあるので、あらかじめ必ず注意も必要です。)

では、泉質(温泉に含まれる成分によって決まる湯質)にはどのようなものがあるのでしょうか。

温泉の種類と適応症・禁忌症

温泉の一般的適応症

神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

温泉の一般的禁忌症

急性疾患、(とくに熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期)



①単純温泉

  • 温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が、1,000mgに満たなく、湧出時の泉温が25℃以上のものです。この内で、pH8.5以上のものを 「アルカリ性単純温泉」と呼んでいます。
  • 肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴で、アルカリ性単純温泉は、入浴すると肌が「すべすべ」する感触があるのが特徴。
  • 適応症一般的適応症に準ずる
  • 禁忌症一般的禁忌症に準ずる

②二酸化炭素泉

  • 温泉水1㎏中に遊離炭酸 (二酸化炭素)を、1,000mg以上含むものです。入浴すると全身に炭酸の泡が付着して爽快感があるのが特徴。ただし、泉温が高いものや加温をすると炭酸ガスが揮散する場合があります。
  • 飲用すると炭酸の爽やかなノド越しが楽しめます。
  • 適応症(浴用)高血圧症、動脈硬化症、切り傷、やけど(飲用)慢性消化器病、慢性便秘
  • 禁忌症(浴用)一般的禁忌症に準ずる(飲用)下痢のとき

③炭酸水素塩泉

  • 温泉水1㎏中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン (HCO3-)のものです。
  • 陽イオンの主成分により、ナトリウム-炭酸水素塩泉、カルシウム-炭酸水素塩泉、マグネシウム-炭酸水素塩泉などに分類されます。 カルシウム-炭酸水素塩泉、マグネシウム-炭酸水素塩泉などに分類されます。カルシウム-炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物・析出物が生成されることがあります。
  • 適応症(浴用)慢性皮膚病、切り傷、やけど(飲用)糖尿病、痛風、肝臓病、慢性消化器病
  • 禁忌症(浴用)一般的禁忌症に準ずる(飲用)腎臓病、高血圧症、一般にむくみがあるとき、甲状腺機能亢進症のときヨウ素を含有する温泉は禁忌

④塩化物泉

  • 温泉水1㎏中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオン (Cl-)のものです。
  • 日本には比較的多く見られる泉質で、陽イオンの主成分により、ナトリウム-塩化物泉、カルシウム-塩化物泉、マグネシウム-塩化物泉などに分類されます。塩分が主成分となっているので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多くなると苦く感じられます。
  • 適応症(浴用)慢性婦人病、虚弱児童、慢性皮膚病、切り傷、やけど(飲用)慢性消化器病、慢性便秘
  • 禁忌症(浴用)一般的禁忌症に準ずる(飲用)腎臓病、高血圧症、一般にむくみがあるとき、甲状腺機能亢進症のときヨウ素を含有する温泉は禁忌

⑤硫酸塩泉

  • 温泉水1㎏中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオン (SO42-)のものです。
  • 陽イオンの主成分により、ナトリウム-硫酸塩泉、カルシウム-硫酸塩泉、マグネシウム-硫酸塩泉などに分類されます。
  • 適応症(浴用)動脈硬化症、慢性皮膚病、切り傷、やけど(飲用)糖尿病、痛風、肥満症、胆石症、慢性胆嚢炎、慢性便秘
  • 禁忌症(浴用)一般的禁忌症に準ずる(飲用)下痢のとき

⑥含鉄泉

  • 温泉水1㎏中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)を20㎎以上含有するものです。 陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。温泉が湧出して空気に触れると、次第に鉄の酸化が進み赤褐色になる特徴があります。
  • また、鉄の含有量が20㎎に達していない場合は、炭酸水素塩泉や硫酸塩泉等に分類されますが、鉄の酸化によって温泉水の色は含鉄泉と同様に赤褐色 になったり、鉄分が少ない場合は茶褐色・緑褐色・黄褐色等になることがあります。
  • 適応症(浴用)月経障害(飲用)貧血
  • 禁忌症一般的禁忌症に準ずる

⑦含銅-鉄泉

  • 温泉水1kg中に銅イオン(Cu2+)を1mg以上含有する鉄泉のこと。 湧出後の酸化により、温泉が黄色、赤色を示すのが特徴。
  • 適応症(浴用)慢性皮膚病のほか一般的適応症(飲用)慢性消化器病
  • 禁忌症一般的禁忌症に準ずる

⑧含アルミニウム泉

  • 温泉水1㎏中にアルミニウムイオン(Al3+)を100mg以上含有するもの です。陰イオンの主成分が硫酸イオン(SO42-)の場合は、 アルミニウム-硫酸塩泉(明礬泉)と呼ぶこともあります。
  • 適応症(浴用)慢性皮膚病のほか一般的適応症(飲用)慢性消化器病
  • 禁忌症一般的禁忌症に準ずる

⑨硫黄泉

  • 温泉水1㎏中に総硫黄2㎎以上含有するものです。単純硫黄型と硫化水素型に大別され、わが国では比較的多い泉質です。タマゴの腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるものです。
  • 適応症(浴用)硫黄型・・・慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病(浴用)硫化水素型・・・高血圧症、動脈硬化症、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病(飲用)糖尿病、痛風、慢性便秘
  • 禁忌症(浴用)皮膚、粘膜の過敏な人、とくに光線過敏症の人(硫化水素型)(飲用)下痢のとき

⑩酸性泉

  • 温泉水の1kg中に水素イオン(H+)を 1mg以上含有しているものです。多くの場合は、遊離の硫酸や塩酸の形で含まれ、強い酸性を示します。
  • 適応症(浴用)慢性皮膚病のほか一般的適応症(飲用)慢性消化器病
  • 禁忌症(浴用)高齢者の皮膚乾燥症(飲用)下痢のとき

⑪放射能泉

  • 温泉水1㎏中にラドンを30×10-10キュリー以上 (8.25マッヘ以上)含有しているものです。放射能というと人体に悪影響を及ぼすと考えがちですが、レントゲン等の放射線量よりずっと少ない量となっています。ごく微量の放射能は、むしろ人体に良い影響を与えることが実証されています。
  • 適応症(浴用)動脈硬化症、痛風、胆石症、慢性胆嚢炎、慢性婦人病、慢性皮膚病(飲用)痛風、胆石症、慢性胆嚢炎、慢性消化器病
  • 禁忌症 一般的禁忌症に準ずる



成分別による特徴は上記のように分別されています(『掲示用新泉質名』)が、ひとつの源泉に複数の成分が含まれていることが多くあります。つまり源泉ごとに含有成分の比率を含め異なる特徴を持つ泉質となりますので注意が必要です。
くどいようですが、温泉には禁忌症(入ってはいけないとされる症状)があるので、あらかじめ必ず確認をしてください。必要なら適切な指導の元で温泉治療を行って下さい。


温泉はわれわれに開放感溢れる空間を与えてくれるとともに、温泉の歴史を刻んできた「温泉大国日本」の歴史を感じさせてくれる。人間だけでなく、サルなど他のさまざまな動物も浴槽では無防備で開放的に温泉を楽しむ。ギスギスした時代だからこそ贅沢に温泉を楽しみながら健康に気を使う習慣はいかがだろうか?
え?風呂上がりはフルーツ牛乳?私はコーヒー牛乳派です。



コウホネ (スイレン科)
Nyuphar japonicum DC.」

 【用部】根茎=センコツ 川骨
 【用途】強壮、止血
 【成分】 nupharidine
河骨(コウホネ)。この名前は根茎が白くて太く、まるで白骨のように見えることに由来しており、この根茎は「川骨(せんこつ)」という漢方生薬で婦人病や止血剤として用いられる。花言葉は「崇高」「秘められた愛情」。
北海道西部、本州、四国、九州および朝鮮半島に分布し、池、沼、河川の岸辺などに生える水生多年草。花期は6~9月。薬用部位は根茎。10~3月に根茎を痛めないように掘り上げ、ひげ根を除いて約30cmに切り、それを二つに割って日干しにする。
利尿、止血、駆瘀血などの作用があり、浄血、強壮、補精薬として月経不順、産前、産後などに用いられる。→ 漢方処方「治打撲一方」などに使用される。


「私がアクビ → 友人もアクビ → 弟もアクビし →→ あら、犬までアクビしちゃったよ。
(アクビってなんでうつるの?

 11月となってだいぶん涼しくなり、昼下がりの気温の涼しさに加えて少し残る日射の強さで、つい食後などウトウトとしてしまう。気が付けばあくびも一つや二つ。
自分ではアクビをしているという意識がないのだが、人から指摘されると「ヤバっ」となる。背筋を伸ばして深呼吸して、自分の席でプチ新体操。
朝の電車でもよくアクビをされている方もいるが、気をつけてみていると結構アクビが伝染していることがわかる。ラッキーなときは3連続のアクビ大会を観戦できる。

そもそもあくびというのはどうしておこるのでしょうか?
簡単に言うと血液中の二酸化炭素濃度が高くなると起こり、脳の酸素不足によって起こる反射の一種です。
そして疲れている時や眠たい時などの脳の酸素不足から覚醒させるため、あくびという「大きな呼吸」をするのです。

ところが人のあくびを見ると自分もあくびが出ることがある、いわゆる「あくびがうつる」ことがあるというのは一体どういうことなのでしょうか。
当然、菌などのような感染があるわけがなく、ただその空間の酸素濃度が低く、たまたまその同じ空間を同じくした他の人にとってもあくびが出やすい環境だったからなのでしょう。
しかし、人のあくびを見ると、何故かつられて自分もしてしまうなど 実はあくびに関して解明されていないこともたくさんあるのです。

今回、伊のピサ大学と国立の認知科学&技術の研究所の共同研究で、“あくびによって感情も伝わっているのでないか”ということが初めてわかったという面白い記事ありました。

この記事によると、厳密なデータの収集によって
「伝染にもっとも重要なのは、あくびをする人どうしの関係の深さだったのです。実際、自分の恋人があくびをする時は、あくびを返してしまう率が高まります」
そして、あくびは親族、友人、知人、まったくの他人の順にうつりやすいことがわかりました。感染速度は、友人、親族、恋人、そして他人の順に速くなることが明らかになったのです。
そして、国立研究所のエリザベッタ・ヴィサベルギは、
「この研究はこれまでの神経科学の報告に基づいています。これらの報告では、脳の感情をつかさどる部分とあくびの伝染にかかわる部分が重なっていることが分かっています」と結論づけたのです。
つまり、あくびとは退屈のサインではなく、感情移入のしるしであるかもしれない、と。


そして、その数ヶ月後には飼い主のあくびは犬にも「伝染」するという実験結果をポルトガルのポルト大学などの研究チームがまとめ、学術誌「アニマル・コグニション」で発表しました。

 人間生活を営むということはさまざまな人に影響し、また影響されるのですが、われわれが考えている以上に複雑に絡み合っているのかもしれません。社会性生物である人間は進化と共に知らず知らずのうちに人を共感させているのかもしれません。

今度電車であくびの連鎖を見かけたら「もしかして?」と空想してみるのも面白いかもしれません。


【文責:長門】